
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2026年5月15日(金)、深度8,000mまで潜航可能な航行型AUV深海巡航探査機「うらしま8000」に、海底マッピングしたソーナー画像を水中音響通信によってリアルタイムで海上の母船に伝送する機能を搭載、試験潜航でソーナー画像の伝送に成功したと発表した。
JAMSTEC技術研究開発部門は、深度3,500mまで潜航可能だった航行型AUV「うらしま」を、深度8,000mまで潜航可能とする改造を進めてきた。「うらしま8000」には、JAMSTECが独自に開発した高速音響通信/通信測位統合装置によるソーナー画像の伝送機能が搭載された。
2025年11月6日(木)から11月26日(水)に日本海溝の水深約7,000mの海域で実施された試験航海では、サイドスキャンソーナーにより、海底の掘削孔に設置された孔口装置や掘削孔の孔口を捉えることに成功した。さらに、このソーナー画像を音響通信により支援母船に伝送し、特徴的な地形や構造物を船上で確認した。
この航海の潜航では、サイドスキャンソーナーの受信信号から、解像度を下げた信号が最大約58kbpsで伝送された。特に、11月15日(土)から11月16日(日)にかけて実施された、地球深部探査船「ちきゅう」による研究航海JFASTとJTRACKの掘削地点付近の潜航では、明瞭な音響反射を捉えていたことを船上でほぼリアルタイムで確認した。
帰港後の詳細なデータ解析では、「うらしま8000」が捉えた明瞭な音響反射が、過去にサイドスキャンソーナーに映った金属製の物体からの音響反射と類似していること、反射が強い地点と弱い地点が近接していること、それらの位置関係がJTRACKとJFASTにおける複数の掘削地点、孔口装置の設置地点と一致していることが確認された。JAMSTECは、これらの明瞭な音響反射について、JTRACKとJFASTでの孔口、孔口装置を捉えていたと断定した。
伝送されたデータによるソーナー画像でも、海底面からの高さが2mから5mの金属製の海底設置物や、直径2m程度の海底面の凹凸を識別できる解像度であり、海底の特徴を観察できる分解能であることが確認された。
従来の音響通信では、AUVの位置情報、電池残量、速力、姿勢などの機体状態を示す数値データは伝送できたが、データ量の大きいソーナー画像などの観測データは伝送できなかった。そのため、観測結果の確認は機体が船上へ揚収された後となり、潜航中に研究対象として重要な観測結果が得られていた場合でも、追加データの取得には限られた調査日程の中で再度AUVを同じ海域に潜航させる必要があった。「うらしま8000」の場合、深度8,000mへの潜航に3時間、浮上に1時間半かかる。JAMSTECは、観測データをリアルタイムで確認できなかったことが、AUV運用における課題の一つだったとしている。
今回の機能により、「うらしま8000」では潜航中にもリアルタイムで海底の状態を継続的に確認できる。これにより、観測結果を見た研究者が、研究対象に応じた追加調査のために船上から測線変更を指示することや、サンプル採取など次の段階の調査計画を速やかに立案することが可能となる。
JAMSTECは今後、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、南海トラフといった日本周辺の超深海において、海溝型巨大地震・津波に関する研究や生物調査などでの活用を見込む。また、AUVを用いた海洋調査・海洋観測は、人的リスクの回避、洋上風力発電をはじめとする海洋産業の拡大、海洋安全保障の取り組みへの活用が進んでおり、観測データをリアルタイムに確認できることがAUVの活用拡大に寄与するとしている。
情報発表元:海洋研究開発機構 - 8,000m級AUV「うらしま8000」からの音響通信によるソーナー画像のリアルタイム伝送に成功







