画像提供:津市

高速船で中部国際空港(セントレア)〜津なぎさまち航路を運航する津エアポートラインは、2025年5月10日(金)に発生した高速船フェニックスの左舷エンジン故障を受け、同日より代替船カトレア1隻による減便ダイヤでの運航を継続している。この故障への対応として、津市は、調査報告や専門機関による意見を踏まえて検討を進めた結果、2025年9月22日(月)、新造船の建造に向けた検討を開始する方針を公表した。

5月から6月にかけて、津エアポートラインが津市に提出した調査報告書では、現時点で確認できる範囲だけでも多額の修繕費用が必要であり、エンジン部品の納品には最長で19か月を要することが明らかになった。エンジンを陸揚げして分解調査を実施した場合、さらに修繕が必要な個所や経年劣化による損傷が発見される可能性が高く、修繕に係る費用と工期の見通しを立てることが困難とされた。

7月14日(日)には、故障当時に乗船していた船長およびエンジンの日本販売・サービス代理店である富永物産へのヒアリングが実施された。エンジンの故障は一部部品の金属疲労などによる経年劣化が原因と見られ、分解には莫大な費用と時間がかかること、また供給が困難な部品が存在する可能性もあることから、最終的に修繕が不可能と判断されるおそれがあることが示された。

続く7月30日(火)には、津市が調査報告書とヒアリング結果を基に、フェニックスの建造時に基本設計及び建造監理業務を担った日本造船技術センターに検証を依頼。同センターは、整備時期や稼働時間の状況などから経年劣化が要因の一つと推定され、主要部品の調達には高額な費用と長期間を要することに加え、エンジンを分解した後に新たな損傷が判明する可能性も十分に考えられるとした。部品の入手が不可能な場合、修繕不能と判断される可能性があることから、修理に向けた取り組みを進めることは得策でないとの見解を示した。

また、同センターがあわせて提出したエンジン換装に関する意見では、フェニックスが高速で安全な運航を求められる旅客船である点を踏まえ、設計時に想定されていない形状や出力のエンジンに換装することは前例がなく、船体強度の低下や耐用年数の短縮につながる可能性があると指摘。検討報告書に記載された換装リスクについても、乗り越えられない可能性が高く、新造船の建造が望ましいとの見解を明らかにした。

これらの経緯を受け、津市は、露見していない損傷の発見によって最終的に修繕が不可能と判断される可能性が高いこと、修繕に必要な期間や費用を考慮した結果、修繕に向けた取り組みは得策ではないと判断。さらにエンジン換装についても、船体の老朽化や運航安全性の観点から妥当ではないとし、フェニックスの処分および新造船の建造に向けた検討を進めると9月22日(月)に公表した。

今後の対応として、津エアポートラインではグループ会社保有の船舶の中から代替船舶の確保を進めており、ドックでの検査等を経たうえで、2025年10月中には津なぎさまちへの回航を行い、1か月程度かけて伊勢湾での航行確認や乗員のトレーニングなど運航準備を進める予定。代替船は旅客定員96名の単胴船で、航海速度は24ノットと、現在30ノットで運航するカトレアよりも時間を要する見込み。

フェニックスについては、津市、津エアポートライン、連帯保証人である両備ホールディングスの三者合意に基づき裸傭船契約を解除、その後、右舷エンジンや制御装置など再利用可能な部品を取り外して整備・保管し、残存する船体については解体または売却に向けた対応が検討される。

新造船の建造に向けては、県内唯一の海上アクセス航路を安定的に維持するため、津エアポートラインとの協力のもと、早期に津航路に最適な船舶の設計・建造および運航体制の検討を開始し、財源については国の補助金の活用に加え、三重県に対しても積極的な協力および支援を求めていく方針が示された。


情報発表元:三重県津市 - 海上アクセス運航事業の 今後の方向性
 
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