画像提供:海洋研究開発機構

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、2025年9月30日(火)に第22回「地球環境シリーズ」講演会「地球環境変動の探求~『みらい』の功績と『みらいII』の任務~」をオンライン形式で開催する。令和7年度末で運航を終了する海洋地球研究船「みらい」が28年間にわたり行ってきた観測・研究の成果を振り返りつつ、後継船「みらいII」に引き継がれる研究課題や役割について議論する。

1997年に就航した「みらい」は、優れた航続距離と観測装備を備えた大型研究船として、熱帯・極域を含む広域にわたる高精度海洋観測を実施し、地球環境変動に関する研究に大きく貢献してきた。今回の講演会では、これまでの「地球環境シリーズ」講演会で紹介されたさまざまな環境変動現象を踏まえながら、「みらい」がもたらした科学的成果や観測技術の発展、将来予測の精度向上につながる研究の道筋を多角的に紹介される。

プログラムの冒頭では、海洋研究開発機構 地球環境部門 研究企画監の佐藤専氏が講演会の趣旨を説明。その後の講演では、「みらい」を活用した多様な研究トピックが取り上げられる。

1本目の講演では、地球環境部門 大気海洋相互作用研究センターの米山邦夫センター長が、マッデン・ジュリアン振動(MJO)に関する10年間の研究成果を紹介する。2014年12月の同シリーズで初めてMJOに焦点を当ててからの歩みを振り返り、インドネシア・スマトラ島西岸沖での観測結果や、MJOに起因する大気・海洋相互作用の理解深化につながる近年の研究成果が解説される。

続く講演では、地球環境部門 地球表層システム研究センターの金谷有剛センター長が、人間活動に由来する物質やシグナルが海洋にどのように届いているのかを論じる。とくに、海洋によるCO₂吸収が温暖化の抑制に寄与する一方で引き起こす海洋酸性化について、IPCC報告書への貢献や観測上の課題を含めて、物質循環と生態系変動の関係性を明らかにする。

3本目の講演では、東京大学大学院理学系研究科の勝又勝郎教授が、メソスケール渦が海洋循環に果たす中心的な役割について、「みらい」の観測を通じて得られた知見を紹介する。海洋表層に常在する渦の構造や挙動を把握するには、フロートや衛星観測と船舶観測を組み合わせた手法が不可欠であり、渦による物質輸送や鉛直混合のメカニズム解明に向けた新たな観測事例についても取り上げる。

4本目の講演では、地球環境部門 海洋観測研究センターの纐纈慎也センター長が、「みらい」の長年にわたる航海データを用いた海洋循環の統合的な分析について紹介する。観測データとシミュレーションを組み合わせた手法によって、直接観測が困難な領域や時期の変動を補完し、広域的な環境変化の構造を捉える取り組みが解説される。

5本目の講演では、同センターのアドバイザーである深澤理郎氏が、「みらい」が参加してきた国際的な観測プログラムにおける貢献について述べる。TOGA、WOCE、CLIVAR、GO-SHIP、OceanSITESといった枠組みの中で、日本の観測船として唯一、WCRPやGOOSに長期的に寄与してきた背景と成果が紹介される。

後半のパネルディスカッションでは、地球環境部門 北極環境変動総合研究センター長の菊地隆氏、むつ研究所長の佐々木建一氏に加え、各講演者が登壇し、司会の増田周平氏の進行のもと、「みらいII」に引き継がれる観測の在り方や、新たな研究ターゲットについて意見交換が行われる予定。

講演会はオンラインで無料配信され、事前登録は不要。


情報発表元:海洋研究開発機構 - 第22回 海洋研究開発機構「地球環境シリーズ」講演会 「地球環境変動の探求~「みらい」の功績と「みらいⅡ」の任務~」
 
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