画像提供:運輸安全委員会


運輸安全委員会は2022年8月25日(木)、足摺岬沖で2021年2月に発生した、海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう(SS-501)」と貨物船「オーシャンアルテミス(OCEAN ARTEMIS)」の衝突事故について、事故調査報告書を公表した。

この事故は、2021年2月8日(月)10時57分頃、足摺岬南南東方沖において、貨物船「オーシャンアルテミス」と、潜望鏡等の一部を海面上に露出することのできる深度まで上昇しながら航行していた潜水艦「そうりゅう」とが衝突したもの。「そうりゅう」は、乗組員3人が負傷するとともに右舷潜舵に曲損等を生じ、「オーシャンアルテミス」は球状船首部右舷外板に亀裂を伴う凹損等を生じた。


▲「そうりゅう」損傷状況

運輸安全委員会が今回公表した報告書によると、事故の原因は、露頂作業に伴い「そうりゅう」が実施したソーナーによる全周捜索において、「オーシャンアルテミス」の聴音等を、当該海域から遠ざかる別の船舶と誤認したことなどが原因とみられている。

「そうりゅう」が10時47分頃に探知していた状況では、「オーシャンアルテミス」とは異なる別船の方位線等を自動探知していたが、「オーシャンアルテミス」の方位線は航走音が聴こえないことなどにより、船舶によるものとは認識されず、同方位線を船舶以外の音源によるものと解釈していた。

その後、10時49分過ぎに「オーシャンアルテミス」の方位線と別船の方位線がほぼ同じ方位となって重なったのち、その方位付近からの聴音が別船のディーゼル音から「オーシャンアルテミス」の推進器音へと変化、1隻の船舶の方位線が表示され続けている中、その方位付近には別船1隻しかおらず、引き続き別船の方位線が表示されていると認識、聴音の変化について当直員長は、自艦変針等による対勢の変化で別船の聴音が変化したものと解釈、その後の聴音観測等においても「オーシャンアルテミス」と別船とが識別されることはなく、衝突に至ったものと見られている。


▲「そうりゅう」ソーナー探知状況。「A船」は「オーシャンアルテミス」、「D船」は当該海域から遠ざかる別の船舶

なお報告書は、「そうりゅう」と「オーシャンアルテミス」は10時51分頃まで真向かいに行き会う状況であったことから、同時刻ごろまで、「オーシャンアルテミス」の推進器音等が、同船の船体等により船首方への伝搬が減衰されて音圧レベルが人間の可聴強度未満となり、同推進器音等を聴知できなかったものと考えるものの、事故当時の水測状況、「オーシャンアルテミス」の放射音圧レベルが不明であることから、その状況を明らかにすることはできなかったともしている。

運輸安全委員会は、報告書の公表に当たり、防衛大臣宛ての意見を表明、露頂作業時の安全確保、報告要領等の改訂、ソーナー監視の強化、事故発生時の迅速な通報、継続的な教育訓練を求めた。


情報発表元:運輸安全委員会 - 貨物船OCEAN ARTEMIS潜水艦そうりゅう衝突
 
【関連ジャンル】
 船舶 : SS-501 そうりゅう
 海運事業者 : 海上自衛隊